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従の月 秘密

従の月 秘密
※一人二役でも構いません。

鴉月(女) 従の月のトップで戦闘力や能力の幅は未知数。人類最強と言われるが「人神」とも呼ばれ、人と神の間にある存在。一人称は俺、男勝りで面倒くさがりな性格。

魔月(男) 従の月の秘匿。「魔付き(まつき)」が転じて「魔月(まがつき)」となり、非常に不吉とされる月名。そのため長らく月欠(つきかけ)と呼称され空席とされていた。しかしその実は柚月の膨大な力の半分である。


魔月 よっ。柚月…いや「鴉月(あづき)」久しぶり。

鴉月 みんな明日あれを暴こうって話してたのに。せっかちだな、半身。

魔月 暴かれていいの?私はいいけどね、お前が卑しい「魔月(まがつき)」だと
   知られた時が最高に楽しみだよ、ははっ!

鴉月 いいよ。ってかお前がいいなら俺だっていいよ、俺たちは表裏一体だし。
   なにより「柚月」という肉体が持つ力の光と闇でしかないんだ。

魔月 「魔月」を襲名したら人格が変わる、次第に狂っていく。そんな狂気を
   柚月は襲名した、そして見事に使いこなしている。凄いよ、この子。

鴉月 月名のトップに授けられる「あ」と、全ての月の活躍を受けて闇が深くなる
   「ま」は似ているけれど全然違う。全ての月名より強くなければ「魔」には
   耐えられない。

魔月 そう、歴代の鴉月が私も兼任できたかと言われれば…無理だね、絶対に。
   人の胎から産まれているのに人に願われ神になった柚月でなければ無理だ。

鴉月 魔月の復活を宣言して恐怖させないように、そして自ら鴉月になって魔月の
   闇を深めないために「柚月」と名乗っている、賢いだろ。

魔月 まさか「意志を持つ月名」でもある魔月を再び襲名する人間が現れるとは。
   しかも鴉月と兼任、驚くなんて言葉じゃ足りないよ。

鴉月 しかし今代の従の月が最強と言われる所以(ゆえん)は、俺が集めた人間が
   秀でているのは勿論だが。従の月の闇を呼び出し、光と闇のバランスを再び
   取ったことで他の月が伸びていることも、また事実。

魔月 そうだな。本来は魔力のある…現在の夜月家が代々「魔」を襲名していた。
   当時は西洋文化がなく忌み嫌われ、多くが心を病んだ者たち。その思念体が
   「魔月」、私だ。だのに、実は呪術師だったなんて方便で元魔月家(まづきけ)
   当主が夜月の名を手に入れた。その時の悲痛な叫び、消えることはない。

鴉月 だから今回のことも夜月を巻き込んだのか。自作自演だともっと早くに
   気づけた筈なのに、あんな凝った暗号…俺かお前しか作れないんだからな

魔月 自作?違うね。柚月と私の自作だが、お前と柚月の自作ではない。鴉月には
   自我がない、自我があるのは私だけだ。一緒にしないでほしいね、不快だ。
   柚月と言う媒介が同じだけだ。

鴉月 柚月は鴉月であり、魔月。今のお前と俺はコインの裏と表みたいなものだ。
   魔月の自我のみで行ったと言うなら傲慢だ、そこまで柚月は弱くはないよ。
   柚月は願われたんだ、政府に、他の月に。
   「魔月を封じてほしい」と。願った形とは違うが、願いは叶えられている。

魔月 彼女は特別だ。産まれてすぐ、あの土御門(つちみかど)の者から養子にと
   話が来たくらいだ。そんな神の特別を超えているだなんて、流石にそれは…
   恐れ多いだろ。

鴉月 従の月がひた隠しにしたい「魔」への暴力と犠牲者。柚月が叶えた魔月を
   封じた方法。夜月家の真の姿…それらをお前は知らしめたいのだろう?
   魔月家の凶弾、柚月に伸し掛かる重圧と柚月の偉大さ、夜月家に対する憎悪

魔月 そして歴代鴉月の無能さも、ね。
   けれど…柚月はまだそれを明かしたくないみたいだ。彼女の意思が私に鋭く
   突き刺さるよ、嫌悪と拒絶。いつかは明かすことなのに…なんでなのかな?

鴉月 却説(さて)柚月の意向がどちらにせよ、あの遺跡は拙い(まずい)ねぇ。
   柚月が「オーパーツ」と言ったのは的確だった。星まで落として、全く…。
   こんな形でしか存在主張ができなかったのか?嘆かわしい。

魔月 莫迦にするな、全ては夜月家を滅ぼすためだ。その精神に刻んでやるっ!
   一族の裏切り者の烙印(らくいん)を抱えて苦しめばいい。星をあの敷地に
   落としたのもまだ序盤だよ、私はもっと苦しめたい。

鴉月 なんにせよ、あの遺跡は消してもらうよ?時代錯誤も甚だしい(はなはだしい)
   政府どころか民間人の目に触れさせて、従の月を屠り(ほふり)たいの?

魔月 ……。柚月は大切だ、でも私の本質は闇だ!壊したい、憎い、悔しいっ!
   私が私を否定できない、従の月のためにも。ならばどうしたらいい!?

鴉月 今まで通り大人しく寝ててよ。俺を煩わせるな。

魔月 みんな努力が美しいと、努力が大切なのだと、努力した者が強いと言う!
   じゃあ私はコレはなんなのだ…生まれ持った才能。神童と呼ばれてきたっ!
   こんな力、欲しいと望んだことなどない!天才は努力しない訳じゃないっ!
   だから努力した。そして星を落として別の世界線からアレを持ってきた…
   これが素晴らしい行いなのだろう!?

鴉月 そんな訳あるか。俺は好きだな、天性の才能。皆が必死こいてる間ずっと
   ぐうたらできる。そんな時に努力だなんだと言われたら…そいつの周囲の
   酸素を取り除いてやる、二酸化炭素を吸って死ね!ははっ

魔月 は…?何故だ…何故だ、何故だ、何故だ!
   柚月なら分かるはずだ、天才故の苦悩と周囲の身勝手な感情が!苦しみが!

鴉月 分からないね。だって柚月は「魔月」なんだ、そして「鴉月」なんだよ?
   今までの魔月襲名者から願われ、神に等しい力をもった「魔月」という名。
   その全てを抱えて尚、従の月が輝く余裕がある人神の柚月が「天才」なんて
   枠で収まる訳ないだろ?柚月からすれば魔月も凡人と変わらないのさ。

魔月 それなら私の、夜月に対する憎悪は分かるまいっ!あの屈辱、悲しみ、怒り
   全て、全て、全て!いつか晴らさねば気が済まないのだ、私の根元だから!

鴉月 例えばそれが晴れたとして、お前はどうなる?お前のアイデンティティは
   消滅して、魔月という自我も消えるだろう。それが望みか?

魔月 もう「まがつき」なんて呼ばれないなら、それもいい。でもそれは叶わない
   わかっている、何をしたって私は私だ。それでも憎くて憎くてたまらない…!

鴉月 だいいち魔月の力が弱くなるのは困る。それは俺の力が弱まると同義だ。
   だから復讐は許さない。夜月を殺すことも許さない。
   柚月の為に人が絶えるまで、憎悪し嫌悪し厭忌し(えんき)唾棄(だき)しろ

魔月 ならばお前はどうなのだ、柚月の何になっている?「鴉月」などただの冠。
   従の月の面々だって薄々「柚月」が「鴉月」だと気付いている、鴉月は常に
   尊い(とうとい)方の側にいて不在、なんていつまで通ると思っている?

鴉月 今お前が「鴉月は冠」と言っただろ、ははっ!そうだよ、俺は柚月が長く
   人の信仰を集める為の飾りでしかない。鴉月や魔月の「設定」なんてものは
   柚月が好きな時に好きなように利用すれば良い、俺たちが出しゃ張る事じゃない。

魔月 あの子がこの国の、延いては世界の武力の均衡を保つ存在になるのならば
   私は地獄の業火に灼かれ続けよう、人間が絶するその時まで。
   だが魔月家の力は、積年するだけ強くなる。お前に敵う日が来たら容赦なく
   殺すから覚悟しておけ…

鴉月 希望を持つのは自由だが、我々は柚月の玩具(おもちゃ)にすぎないんだ。
   互いに主人の駒として、精々殺されないように努めようじゃないか。
   魔月家は恨みがあるだけ良い。那月は以前「奈良の奈」と書いていたのは
   知っているだろ、名を取られては存在すら出来ないのだからな。

魔月 知っている。「騨(まだらうま)の月」で、たつき「花の月」で、かづき。
   懐かしい話だ。まぁ今回は引くよ、柚月に私の気持ちが伝わったようだし。
   あの「オーパーツ」も消すさ、明日には他の月の記憶からも消えるようにね。

鴉月 助かるよ、これで柚月の機嫌も治るだろう。さっきからずっと苛々していて
   少し怖かったからな、あの子は一度怒ると何をするか分からない節がある。

魔月 名まで取られないだろうと高を括っていたんだ。ごめんね、柚月。
   悪戯がすぎたよ。私たち魔月家はまた暫く眠るから、どうか許してほしい。
   却説(さて)、それじゃあね。私の半身。

鴉月 あぁ、おやすみ。俺の半身。


ー挨拶
鴉月 鴉月役 (名前)
魔月 魔月役 (名前)